ぼくの脳内

ぼくの脳内を言語化してみた

恨み

 これほどに生産性の無い感情は無いと思う。
 

 散々そいつに振り回されて、でもそれに見合った報酬は何一つ得ることは出来ないんだ。
 

  癌だった父は病院に殺された。

 

 彼が亡くなった今でも、娘は病院へ抗議の手紙を送り続けている。それは彼女自身が抱えた恨み。その感情を父親が望んでいるのかは知らないが、彼女への精神的負担は大きいのだろうと伺える。
 彼女にとっては大切な父親であり、彼は病院の不親切な対応で殺されたという。確かに彼女からすれば、それは受け止めがたい現実であり、怒りをどこにぶつけるかと言われたら、病院しか無いのである。

 

  彼女は何のために戦っているのだろう。

 

  父親の無念を晴らすため。病院を潰すため。色々考えられるだろう。でも、結局は彼女の自己満足に過ぎないのかもしれない。

 父親は、娘がわざわざ病院に抗議してここまで苦労することを望んでいたろうか。そんな利己的な父親なら愛することは出来ないだろう。そんなことに時間を割くくらいなら、今までの父親との思い出を振り返ってみたらどうか。
 (しかし、こんな批判が出来るのも、自分がそれを実際に体験していないからであり、その状態で批判をするのは非常に愚かだ。しかし、その前提ありきでは、批評家という肩書はすべて崩壊する。ここではそんなこと無視してつらつら書くのだ。ご了承いただきたい。)

 

 彼女は今日も戦う。未知なるものと共に。そして、想像上の父親と共に。

 彼女にとって、この冷戦は彼女と父親とを仮想的——と言っても、彼女にとっては極めてリアル——に繋ぐ、唯一の手段なのだから。